制作記 · Echo Runner
暗闇を探るゲームから、高速で洞窟を駆け抜けるゲームへ――Echo Runner制作記
手動エコーを中心にした探索ゲームが、操作を削り、二つの自動ソナーのリズムで洞窟を駆け抜けるゲームになるまでの制作記です。
「Echo Runner」は、暗い洞窟をコウモリが高速で飛び続けるゲームです。
操作はとても単純です。画面を長押しすると上昇し、離すと下降する。周囲には定期的にエコーが広がり、その瞬間だけ洞窟の形や景色が浮かび上がります。
しかし、最初からこの形だったわけではありません。
制作を始めたときに作りたかったのは、エコー、つまり「音で探索する感覚」をゲームにしたものでした。そのため初期版では、プレイヤーがエコーを出すタイミングを判断し、自分で操作することをゲームの中心に置いていました。
試作を触りながら調整を続けた結果、その中心だった操作を外すことになります。
音で探索する感覚をゲームにしたかった
この作品の出発点は、コウモリのキャラクターや洞窟の風景ではなく、エコーそのものでした。
何も見えない空間へ音を放ち、返ってきた反応から周囲の形を知る。その感覚を画面上の遊びにできないかと考えました。
最初は、エコーを出すタイミングもプレイヤーが操作していました。暗闇の中で、いつ周囲を確認するかを判断する。その判断がゲーム性になると考えていたからです。
近くを確認する小さなエコーと、遠くを見るための大きなエコーを分ける案も試しました。小さな円を頻繁に出して近景を断続的に見せ、短くタップすると大きな円が広がり、遠景まで確認できる構造です。
目の前はぼんやり見える。しかし先へ進むには、自分で大きなエコーを出さなければならない。当初は、それがこのゲームの駆け引きになるはずでした。
考えることが多すぎて、景色を見られない
ところが、実際に遊ぶと別の問題が起きました。
コウモリの上下移動を制御し、洞窟の壁を避け、エコーを出すタイミングも考える。プレイヤーが処理しなければならないことが多くなりすぎて、肝心のエコーで広がる景色へ目が向かなかったのです。
さらに試作を続けるうちに、もう一つ大きなことに気づきました。
エコーを出す操作そのものが、ゲーム性にあまり寄与していなかったのです。
もともとは作品の中心に置いていた操作でした。しかし、その操作があることで洞窟を飛ぶ面白さや、暗闇から風景が現れる瞬間を見にくくしている。そこで、エコーをゲーム上の判断から切り離し、見た目の演出として割り切ることにしました。
遠景ソナーを、クールタイムが終わると自動で発射される方式へ変更。近距離の小さなソナーも定期的に発生するようにしました。
プレイヤーが行う主な操作は、上昇と下降だけになりました。
これは単なる簡略化ではありません。何を操作させ、何を作品側へ任せるかを整理した結果です。エコーを撃つゲームではなく、エコーが生み出す明滅の中を飛ぶゲームへ、作品の中心が移りました。
難しいのに、遅くて爽快感がない
エコーの整理と並行して、移動速度にも大きく手を入れました。
初期の試作は難易度が高い一方で、横へ進む速度は遅く、爽快感が十分にありませんでした。慎重に壁を避けなければならないのに、前へ進んでいる気持ちよさが弱い状態です。
そこで、上下へ自由に飛び回る感覚を強めるのではなく、前方への速度を上げる方向へ調整しました。
上下移動を遅くしながら横速度を上げる。さらに横速度を引き上げ、上昇が遅く下降が速すぎる問題には、上昇力だけでなく重力加速度そのものを調整する。そうして「上下を慎重に制御しながら、前方へ高速で飛ぶ」感覚へ近づけていきました。
調整中には、横速度を上げたはずなのに、遊んだ感触が変わらないこともありました。確認すると、ゲーム中の更新処理が毎フレーム速度を以前の値へ戻していました。数値を変更しただけでは、実際のゲームに反映されていなかったのです。
操作感の調整では、設計上の意図だけでなく、実際に触った感覚とコード上の挙動が一致しているかを確かめる必要がありました。
速度を上げるために、洞窟を広げる
横速度を上げると、今度は従来の洞窟では回避が間に合わなくなります。
そこで画面をズームアウトし、より先まで見える案を試しました。一時は横方向を5倍ズームアウトし、横速度も大きく上げています。その後は2倍ズームアウトへ調整し、コウモリを小さく表示しながら先の洞窟を見せる形へ移りました。
それでも、見える範囲を広げるだけでは足りません。
難易度が高い一方で速度が遅いという問題を解消し、高速でもクリア可能にするため、洞窟そのものを縦方向へ1.5倍に広げました。そして空間だけが広くなって動きが鈍く感じられないように、重力、上昇力、上下速度の上限も同じ倍率で調整しました。
速度を上げて爽快感を作る。その速度でも回避できるように空間を広げる。広げた空間に合わせて上下移動も調整する。
一つの数値だけを変えるのではなく、速度、視界、洞窟の大きさ、重力をまとめて設計し直す必要がありました。
二つの自動ソナーが作るリズム
現在のEcho Runnerでは、近景と遠景を異なるソナーが見せています。
近距離ソナーは短い周期で発生し、目の前の洞窟を断続的に浮かび上がらせます。遠景ソナーはそれより長い周期で広がり、先の地形と景色を見せます。
この形へ至るまでに、エコーの頻度、半径、広がる速度、遠景ソナーのクールタイムを何度も変更しました。近距離ソナーは、波紋が広がる速度を遅くしながら最終半径を広げたこともあります。遠景ソナーの間隔も短い状態から調整を重ね、最終的に3秒周期になりました。
かつてはプレイヤーが「いつ見るか」を決めていました。現在は、作品側が異なる周期で視界を提示します。
その結果、エコーは攻略のために押すボタンではなく、暗闇の中から景色が現れては消える、この作品固有のリズムになりました。
試作から「夏休みの商店街」へ
ChatGPT上で段階的に調整した試作は、Echo Runner v12を基準として、Codexで「夏休みの商店街」へ移植しました。
単体の試作HTMLをそのまま置くのではなく、スマートフォンを優先したCanvasゲームとして整理し、ゲームページ、作品一覧、サイトマップへ統合しています。距離スコア、ベスト記録、衝突、即リトライも備え、商店街の駄菓子屋から遊べる作品として公開しました。
公開後も、効果音や環境音、伴奏は変えずに、メロディ部分だけを聞こえやすくする調整を行っています。
削った操作が、作品の個性になった
Echo Runnerで特に気に入っているのは、景色が切り替わる瞬間と、エンディングが始まる瞬間です。
どちらも、最初に中心だと考えていた「エコーを出す操作」そのものではありません。エコーによって見えるものと、その見え方が変化する瞬間です。
制作を始めた時点では、音で探索する感覚をゲームにするため、エコーを出す判断が必要だと考えていました。しかし実際に遊ぶと、その判断が多すぎる情報の一つになり、見せたかった景色を隠していました。
そこで操作を外し、エコーを演出として自動化しました。同時に横速度を上げ、洞窟を広げ、視界と重力を調整しました。
完成版の操作が単純なのは、最初から単純なゲームを作ろうとしたからではありません。試作を重ね、作品の中心ではなかった操作を一つずつ手放した結果です。
今のEcho Runnerでは、プレイヤーはエコーを撃ちません。
暗闇の中へ自動で広がる音と光に合わせて、コウモリを飛ばします。景色が現れては消える周期の中で、前方へ高速で進み続ける。それが、試作の末に見つかった現在の遊び方です。