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制作記 · フォークリフト・バランス

正解のメーターを消して、運転席へ――フォークリフト・バランス制作記

上面・側面ビューで数値を合わせる訓練ゲームが、荷物の形と影から見えない重心を読む一人称ゲームになるまでの制作記です。

「フォークリフト・バランス」は、運転席から荷物を観察し、見えない重心を推測して持ち上げるゲームです。

荷物の形、太さ、部品の密度、床に落ちる影を見る。ハンドルでフォークの左右位置を決め、レバーでティルト角を調整する。前進して爪を差し込み、上昇レバーを引いた瞬間に、判断の結果が分かります。

現在の作品には、重心の正解位置を示すメーターがありません。最初の試作には、それがありました。

最初は二つの図を見比べていた

初期版の画面には「上面ビュー」と「横面ビュー」が並んでいました。

上面ビューでは、荷物とフォークを真上から見て左右位置を調整します。荷物には重心のヒントが表示され、画面下にはLEFTからRIGHTまでの位置メーターがありました。

横面ビューでは、フォークリフト全体と荷物を横から確認します。設定した角度と「荷重時予測」が数値で表示され、荷物の重さによって爪がどれだけ沈むかを見ながらティルト角を合わせました。

操作は、位置と角度を調整し、「前進・差し込み」「上昇」の順にボタンを押す二段階です。

荷重中心と爪の角度を理解するための、図解付きシミュレーターに近い構成でした。

ゲーム全体を、運転席から作り直す

次の大きな更新では、画面が一人称の運転席視点へ作り直されました。

上面図と側面図はなくなり、倉庫の床、フロントガラス、左右のピラー、マスト、荷物、パレット、フォークが一つの視界に入ります。操作UIもスライダー中心のパネルから、ハンドル、前進ペダル、ティルトレバー、上昇レバーを模した形へ変わりました。

さらに、設定角と荷重時予測の数値表示、位置メーター、重心を示すヒントも取り除かれています。

代わりに残ったのは、荷物そのものの見た目です。

片側へ補強材が集まった鉄骨、密度がわずかに違うパイプ束、根元が太い樹木、部品が片側へ集中したトラックフレーム、中身が見えない密閉木箱。各ステージでは、形、影、傷、床への沈み方が手掛かりになります。

「正しい位置をメーターへ合わせる」操作から、「何を根拠に正しい位置を決めるか」という観察へ、ゲームの中心が移りました。

見た目の中央と、重さの中央は違う

最初の荷物は、重心が中央にある均一な鉄骨です。次の鉄骨には右端へ補強材が集まり、見た目の中央へ爪を差しても支えきれません。

ステージが進むにつれて、許容される左右位置とティルト角は狭くなります。荷物が重いほど爪は前方へ沈むため、無荷重時に水平へ合わせるだけでは足りません。

正解は、左右位置と、荷重後の角度という二つの条件で決まります。

持ち上げに失敗すると、荷物は左、右、手前、奥のいずれかへ落ちます。結果メッセージは「重心はフォーク中心より右側」「持ち上げ時に爪が前下がりになりすぎた」など、失敗した方向と理由を示します。

運転前に正解を表示するのではなく、持ち上げた結果から重心を絞り込める構成です。

落下方向と説明も、判定に合わせ直す

一人称化の後には、左右および前後の落下方向とヒントを修正する更新も残っています。

フォーク位置が重心より左なら、荷物は右へ滑り落ちる。爪が前下がりになりすぎれば、荷物は前へ落ちる。判定内部の誤差の符号と、画面上の落下方向、説明文が一致するように揃えられました。

視点を運転席へ変えると、左右と前後はプレイヤー自身の方向感覚になります。失敗演出が判定と逆なら、観察から学ぶ手掛かりも逆になります。

この小さな修正は、失敗を次の試行へつなげるために必要でした。

説明を見るゲームから、荷物を見るゲームへ

初期版は、上面と側面、位置メーター、設定角、荷重時予測を同時に見せていました。現在版は、それらを隠し、運転席から見える荷物と操作機器へ画面を絞っています。

情報を減らしたことで、荷物の造形が問題文になりました。

プレイヤーは数値を合わせるのではなく、補強材、太さ、密度、影を読みます。そして失敗した方向から、見えない重心の位置を修正します。

現在の「フォークリフト・バランス」が短い推理ゲームになっているのは、物理量をなくしたからではありません。内部にある重心と荷重の計算を、先に答えとして見せない構図へ変えたからです。

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