制作記 · 積層登攀機(Print Tower)
描いた線を足場にするまで――積層登攀機「Print Tower」制作記
画面へ直接足場を置く30行の試作が、経路入力と造形を分離し、操作盤と観察画面を持つ積層ゲームになるまでの制作記です。
「積層登攀機」は、指で一層ずつ足場を印刷し、小さな登攀者を塔の上のゴールへ導くゲームです。
ゆっくりなぞれば樹脂は太く、速く動かせば細くなる。支えのない場所へ伸ばしすぎると線は垂れ、さらに無理をすると途切れます。印刷ヘッドを登攀者へ近づけすぎれば、熱い樹脂が触れてゲームオーバーになります。
完成版では、下に平面の操作盤、上に立体的な造形画面があります。プレイヤーは下をなぞりながら、上で足場が積み上がる様子を見ます。
この二画面構成は、最初の試作にはありませんでした。
30行から始まった試作
最初の実装は、ゲーム本体が約30行に圧縮された小さなプロトタイプでした。
9×9の盤面に一筆で足場を置き、指を離すと登攀者が上の層へ進む。画面上には樹脂柱と鉄柱があり、樹脂は横方向にも接着し、鉄は上だけを支える。フィラメントには上限があり、ゴールへ届けば完成です。
この段階では、入力した場所へそのままブロック状の足場が置かれました。印刷ヘッドも指の位置へ追従し、登攀者に近づけすぎると「熱い!」という失敗になります。
まず、描く、積む、登る、失敗するという一周を短いコードで成立させた試作でした。
点を置くのではなく、吐出した線にする
次の段階では、足場が格子状のブロックから連続した線へ変わりました。
指の移動速度を測り、遅い入力は太く、速い入力は細くする吐出モデルが加わります。支えのない距離が長い線には垂れが生じ、幅と垂れ具合によって足場の品質が変化するようになりました。
ここで、指の軌跡は単なる配置指定ではなくなります。
同じ形を描いても、動かす速度によって使用するフィラメント量、線の太さ、足場として使えるかどうかが変わる。操作の仕方が、そのまま造形物の性質になりました。
登攀者も、置かれたセルではなく、十分な太さを持つ実際の造形を使って登るようになります。ゲームの見た目と判定が、同じ印刷結果を参照する構造へ近づきました。
描く操作と、印刷ヘッドの動きを分ける
制作途中では、入力と吐出を一度分離する大きな変更も行われています。
それまでは、指を動かしている最中に印刷ヘッドも移動し、樹脂がその場で出ていました。変更後は、先にガイドとなる経路を描き、指を離した後でヘッドが始点へ移動し、その経路に沿って印刷する構成になりました。
さらに、ヘッドが画面端など決まった位置から始まるのではなく、スワイプを始めた地点から印刷を開始する修正も入りました。
この版では「どこを通すか決める時間」と「機械が造形する時間」が分かれています。入力した経路を機械が再演するため、印刷工程を観察しやすい構成でした。
最終的には、リアルタイム吐出へ戻った
現在版では、経路を記録して後から印刷する方式ではなく、操作中に樹脂がリアルタイムで吐出されます。
ただし、初期版の直接操作へ単純に戻ったわけではありません。
画面を二つに分け、下側を現在層の平面操作盤、上側をアイソメトリックの観察画面にしました。入力する面と、出来上がる塔を見る面を分離したのです。
下の操作盤には、現在の層、前の層、樹脂柱、鉄柱、ゴール、登攀者、印刷ヘッドが平面で表示されます。上の画面では、線の太さ、垂れ、積層、登攀者の移動を立体的に確認できます。
操作盤は経路を正確に描くための面、上画面は結果を読むための面になりました。
途中版で試した「入力と造形の分離」は、時間差ではなく、画面の役割分担として現在版へ残っています。
完成した塔は、攻略の跡でもある
ゴールへ到達すると操作盤は消え、作った塔をドラッグして回転し、ピンチで拡大縮小できる観察モードになります。
このとき残る塔は、決められた正解モデルではありません。どこを通り、どこで太く押し出し、どの場所を支えにしたかというプレイの記録です。
最初の試作では、描いた場所へ足場が置かれればゲームは成立していました。その後、速度、太さ、フィラメント、垂れ、支持、熱、登攀を同じ造形へ結びつけていきました。
そして操作と観察が一つの画面で競合する問題に対し、入力を下、結果を上へ分けました。
「積層登攀機」は、線を描くゲームから始まりました。現在は、描き方によって構造物を作り、その構造物を使って登り、最後に自分の塔として眺めるゲームになっています。